指輪物語-LOTR-
2014年8月11日 映画PTQに出れなかったのは非常に残念でした。
レポートというレポートが無いので、
今回は代わりに最近見た映画の話でも。
多くのネタバレを含むので、
これから見たい、という人の為にも肝心の部分は伏せさせて頂きます。
この映画は三部作で
第一部「旅の仲間」は2001年、
第二部「二つの塔」は2002年、
第三部「王の帰還」は2003年に世界中で放映されました。
今回お話するのはその一つ、旅の仲間についてです。
~あらすじ~
物語の舞台は「中つ国(ミドルアース)」と呼ばれる世界です。
その昔、多くの指輪が作られました。
3つの指輪は空の下なるエルフの王達に。
7つの指輪は岩の館のドワーフの君主達に。
9つの指輪は定命の者、死すべき運命の人間の子に。
これとは別に、指輪がありました。
その持ち主はサウロン。
1つの指輪は暗き御座の冥王の為、
影横たわるモルドールの国に。
有名な始まりの言葉があります。
「1つの指輪は、すべてを統べ、
1つの指輪は、すべてを見つけ、
1つの指輪は、すべてを捕えて、
暗闇の中に繋ぎとめる。
影横たわるモルドールの国に。」
サウロンは指輪の力を使い、
全ての生きとし生ける者を滅ぼそうとしました。
これに対して、多くの生き物は団結し、反抗し、
魔王の軍勢に大きな打撃を与えたのです。
とりわけ大きな活躍をしたのが、
人間の王、イシルドゥアでした。
彼は父親が取り落とした剣を拾い、
魔王の指を切り落としました。
力を失った魔王は消えました。
しかし王は指輪を捨てる事が出来ず、
その魔力に憑りつかれたのです。
戦乱の中で、指輪は行方知れずになりました。
魔王は滅び、指輪も消えた。
そう、巷では長く考えられてきました。
実の所、遠い昔に滅んだ魔王の事など皆忘れていたのです。
しかし実際は違いました。
魔王は自らの力を指輪に託し、復活の時を待っていたのです。
ひょんな事から、ホビット族と呼ばれる小人の1人、
ビルボ・バギンズはその指輪を手に入れてしまいます。
彼はある冒険の途中だったのですが、
その指輪の力を借りていくらかの事を成しました。
それから更に時は経ち、
ビルボはその指輪を甥っ子のフロドに譲る事を決めます。
といっても、本当はビルボはそれを手放したくなかったのですが。
魔法使いのガンダルフに諭されて、仕方なく、手放したのです。
指輪には強い魔力があり、
それはかりそめの持ち主を誘惑し、腐敗させ、
本来の持ち主であるサウロンの元に戻ろうとします。
ビルボは長い間指輪を持っていたので、その魔力に侵されていたのです。
指輪を譲り受けたフロドですが、危険がすぐそこに迫っていました。
サウロンに従う幽鬼「ナズグル」が、
指輪の前の持ち主であるゴラムを拷問して、
ビルボが今指輪を持っている、と聞きだしたのです。
フロド達は予期せぬ形で自分達の住むホビット庄を飛び出し、
そして―――。
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この映画の見所は沢山あります。
ニュージーランドの美しい風景、そこから生まれた中つ国の風景。
魅力的な登場人物達。
闇に潜む恐るべき生物達。
エルフ達の荘厳な館。
私がその中でもお勧めしたいのは、
彼らが何の為に戦ったか。という事です。
この物語はファンタジーでありながら、
個々の人物が非常に際立っています。
多くの登場人物が居るのですが、
その大体はわかりやすく、簡潔に描かれています。
主人公は、強力な魔法を使うのでもなければ、
卓越した剣や弓馬の技術があるわけでもなく、
優れた工匠でもなければ芸術家でもありません。
ホビットという種族について、映画の冒頭で描写があります。
彼らは食べる事が好きで、農耕と酪農で生計を立て、
非常に平和な世界に生きています。
そんな彼らがなぜ指輪を巡る物語の主人公になったのか。
それはまさしく、偶然です。
いくらかは魔法使いのガンダルフのせいもあるかも知れません。
しかし指輪に関わるという決断をしたのは、彼ら自身でした。
野心を持つ人間でもなく、
力を持つドワーフでもなく、
美しいエルフでもなく、
小さなホビットが指輪を持つ事。
それに大きな意味があったのです。
先にも述べましたが、指輪は強力な魔力を秘めています。
力や地位があるものが使えば、たちまちそれは目立ち、
そして結果的に、その「欲望」を利用されてサウロンの手に落ちていたでしょう。
フロドやビルボは、この誘惑と戦うのに適した人材だったのです。
物語の途中で、指輪を巡る旅の仲間が結成されます。
それは指輪を葬り、サウロンを倒すというとてつもなく危険な旅です。
大勢ではいけません。かといって、1人でも無理です。
種族会議が紛糾した時、フロドは指輪を葬る役目を、
1番に買って出ます。
ガンダルフを演じたイアン・マッケランのその時の表情が忘れられません。
その旅が、危険で辛く、決して希望があるとは言えないという事をわかっていたのです。
ガンダルフは自分も旅に加わる事にしました。
自分の英知と技が、旅に役立つ事を知っていましたし、
また、フロドを巻き込んだ責任を取るつもりだったのです。
ストライダーであるアラゴルンもここに加わります。
彼はイシルドゥアの末裔で、その事を恥じても居ましたが、
かつての先祖への畏敬の念を忘れた事はありませんでした。
エルフの王子であるレゴラス、
ドワーフの王子であるギムリもここに加わります。
そして指輪を葬る事に懐疑的だった執政の息子、
ボロミアもここに加わります。
更に会議に忍び込んでいた
ホビットのサム、メリー、ピピンの3人も加わりました。
このままではあらすじどころか全てを書いてしまいかねないので、
多くの事は省きますが、
旅の仲間の中では、もっともボロミアの心理描写が攫みやすいでしょう。
彼は人間の代表の1人であり、
今まさにサウロンの脅威を実直的に感じている人間でした。
森や山の民とは違い、
彼が住むゴンドールは影の国モルドールの目と鼻の先にあり、
サウロン復活の暁に、血祭に挙げられるのは間違いありませんでした。
彼は焦り、恐れていました。
自分の民が滅ぶ前に、何か手を打たなければ。
そんな時、指輪が思いがけなく彼の目の前にやってきたのです。
彼は種族会議の際に、これを武器に敵に殴り込みをかける事を提案します。
そしてその力を人の、自分の為に使えれば、と考えるのです。
これはひどく当然の事です。
ボロミアは分別があり、仲間を愛し愛される、優れた人間です。
その彼でさえ、指輪の力には魅せられたのです。
提案は却下され、旅の仲間にと加わりますが、
彼がよくない考えに蝕まれていく様と、
それに抗って戦う瞬間は、
第一部におけるもっとも重要な人物描写と言えるでしょう。
旅を通して、ほとんど全ての仲間が良くも悪くも「変わって」行きます。
その様子を共に見ていく事も、この映画の楽しみの1つでしょう。
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物語を3つに大きく分けて場面を区切ると、
「指輪を巡る回想~ビルボからフロドへ
「フロドと幽鬼達の追走劇
「旅の仲間の戦い
この3つに分けられており、
もし一時に見れない時は、
これらを分けて見る事で話を繋げて楽しむ事が出来るかと思います。
もし主人公を比重別に設定するならば、
「サウロンとガンダルフ
「フロドとアラゴルン
「ボロミア
となるでしょう。
各パートの心理描写もさる事ながら、
この話はあくまで第一部。
次の物語への多くの布石も散りばめられています。
アラゴルンはエルフのアルウェンと恋仲ですが、
種族の違いからその恋が実るかはわかりません。
サウロンがどのような形でこれから攻めてくるのか、
様々な問題を孕んだ旅の仲間はその目的を達成できるのか。
モルドールの雷雲逆巻く恐ろしい風景と、
緑溢れるホビット庄ののどかな風景、
そしてその後の雪山や洞窟の壮大な風景。
映像が考えるよりも先に頭に飛び込んできます。
そしていつの間にか私達は、中つ国、ミドルアースへと踏み込んでいるのです。
それでは、また次回。
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