決戦のゆくえ-There and Back Again-
決戦のゆくえ-There and Back Again-
決戦のゆくえ-There and Back Again-
>本当に大切なものは、目には見えないものなんだよ。
Nicolです。

五軍の決戦を予期していたガンダルフ。
自らが得た宝物に執着したトーリン。
その宝物を得ようとしたエルフ王。
さらにスマウグ(竜)を倒し、傷ついた民の為に財宝を必要としたバルド。
竜の死を知り、ドワーフごと屠ろうとする冥府の将軍、アゾグ。
そして、小さなホビット、ビルボ=バギンズ君が望んだものは。

ホビット-決戦の行方-(原題:五軍の戦い)は、
竜の残された「遺産」を巡っておこる
人とエルフとドワーフとオークとボルグの戦いを描きます。

竜が人に倒されたことで、
財宝を独り占めする機会を得たドワーフ一行。
一方で、湖の人々はドワーフ達のせいで竜がやってきた上に、
多大な犠牲を払ってそれを倒すことに成功したのに、
山の下の王となったトーリンが財宝を独り占めすることに納得がいきません。
そして王となったトーリン=オーケンシールドは、
次第に祖父が取り付かれた無限の富、財宝の魔力に蝕まれていきます。

エルフ王はかつて自分達が上納した品も竜の財宝にあるのは承知でしたし、
トーリンを山の下の王と認めるのは不服でした。
なにより彼らは自分達の領地を不当に通過したならず者でもあります。

その頃、ガンダルフは闇の勢力の復活を目の当たりにし、
竜の死が更なる戦いの幕開けになる事を予期していました。
1つが去りて、5つが来たる。
ガンダルフの読みどおり、
トーリン一行が倒したゴブリンの王の配下は、
思った以上に怒り狂っており、
竜の脅威がない以上、少人数のドワーフに目にもの見せると息巻いていました。
アゾグは、トーリンに復讐を果たす為にも、
冥府の王、サウロンの指示の元、極めて速い行軍で、
もう山の近くへと迫っていました。

トーリンは財宝を得たがために、
血族のドワーフ、くろがね山のダインに援軍を求めます。
いずれ人間やエルフが財宝を求めてくると知っていたからです。

かくしてそれぞれの思惑で五軍が集結しつつありました。
しかしビルボは、そんなことになるとは思っていませんでした。
彼は自分達の財宝探しの旅で、
こんなに人死が出ると思っていなかったのです。
探索と究明の先には、輝かしい終わりが待っていると、
そう思っていたのです。
実際には違いました。
自分達が竜を怒らせたせいで、湖の町は壊滅しました。
多くの命が奪われたことに、良心の呵責が残りました。
ドワーフ達にしてみれば、山の都市”エレボール”は、
故郷であり取り戻すべき場所でしたが、
それでも、ビルボは自分が何か湖の人々にしてやれないかと考えました。
それに、エルフと人間と向き合うのも真っ平ごめんでした。
エルフには、彼らは知りませんが、
ドワーフ達が捕まっている間にワインやパンを拝借しましたし、
別にビルボはエルフが嫌いなわけではありませんでした。
とりわけ、エルフの女王の美しさには今まで感じたことのない感情すら抱きました。
湖の人達も、トーリン達が伝承に伝えられた
山の下の王の末裔である事を知ると快く迎えてくれました。
ビルボは、あることを思いつきます。

それは、トーリンが心から欲していた、
完全なる宝石、山の精髄、アーケンストーン。
それをバルドとエルフ王に上げることでした。
―私は14分の1の分け前を貰う取り決めだった。それくらいしても構わないだろう。―
ビルボは、自分が貰う分の財産を全て投げ出して、
そして争いが終わることを望みました。

しかし、そうはなりませんでした。
アーケンストーンをエルフと人間側が持っていることを知った
トーリンは怒り狂います。
ビルボに罵声を浴びせ、彼との関係を断絶します。
哀れなホビットが追い出された直後、戦いの火蓋が切られます。
それは人とエルフとドワーフの間に、ではなく。
暗雲と共に、地の底から闇の軍勢が現れました。

くろがね山のダインと人間、エルフ軍はゴブリンとボルグ達に包囲されていました。
個別の能力や装備はエルフやドワーフの方が上でしたが、
ゴブリンには圧倒的な物量がありました。
次第に3軍は押されていきます。
そのとき、固く閉じられていたはなれ山の城門が開き、
13人のドワーフが突撃してきました。
みんな、トーリン達がいることを忘れていたのです。
彼らは鬨の声をあげ、ボルグやアゾグの軍に襲い掛かりました。
アゾグは、トーリンにとって、互いに宿敵なのでした。
数こそ少なかったものの、ドワーフ達の士気は高く、闇の軍勢は怯みました。
この勢いを借りて、各地の軍も体勢を立て直しました。
それでもアゾグの軍は強く、立ちはだかる種族の軍を蹴散らしていきます。
もうだめだ、とビルボが思ったその時。
遠い空に、大きな翼が見えました。
「鷲だ!鷲が来たぞ!」
ビルボはあらん限りの声で叫びました。
怒号と喊声の飛び交う戦場の中では、誰にも聞こえないくらいに小さな声でしたが。
その時、ビルボは頭に流れ弾である投石の一撃を食らって気を失いました。
もっとも、彼は指輪を嵌めた結果、透明になって誰にも気づかれなかったのです。



ガンダルフはかつてビルボに言いました。
”本当の勇気とは、相手を倒すことではなく、
仲間を助ける時なのだ。”
この老魔術師は、ホビット達のもつ可能性について知っていました。
白の魔法使い、サルマンほど高慢ではなく、尊大ではなく、
エルフに恋心を抱いたり、ドワーフに文句を言ったりと、
どちらかというと人間らしい部分を持った彼は、
小さな人達が持つ、大切なものの力を知っていました。

後に、指輪を滅ぼす旅に出たホビット、フロドに同行した
庭師のサムワイズ=ギャムジーはこう言います。
「僕らはそれでも戦うんです。
なにか、良いものの為に。
僕らが大切にしてきたものを守る為に。
子供達が笑ってくらしたり、食べて飲んで笑える日々を過ごす為に。」
破滅が予見され、暗黒が迫りくる中での出来事でした。

ホビットが持っていた小さな勇気は、
勇猛な戦士である人間達や、優れた見識を持つエルフをも驚嘆させます。
彼らは時に、その身体に似つかわしくない、大きな勇気を見せたのです。

宝石でもなく、黄金でもなく。
ビルボが旅の果てに得たのは、本当に得たかったものは、
旅の前には彼が思いもしなかったものだったのです。
勇気と優しさを持ったビルボは、
また、一つの指輪を手に入れましたが、
指輪に囚われた哀れなクリーチャー、ゴラムを助けました。
本当は彼を殺す事も出来ましたが、ビルボはそれをしませんでした。

その事が良い事だったのかどうか。
それはホビットではなく、指輪の三部作で明らかにされています。
かつては川の民だったスメアゴルが、どのように指輪に侵され、
ゴラムへと変貌したのか。
そして指輪にどのように関わるのか。
気になる方は指輪物語三部作もご覧ください。

物語の結果は、是非劇場で。
また次回。

コメント

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索