原稿逃避行-Alice through the looking grass-
原稿逃避行-Alice through the looking grass-

>時間泥棒!
Nicolです。

今回は、本国に続いてやっぱり日本でもポシャッてしまった
アリス2-邦題忘れた-について。
先々月と先月ずっと旅行したり仕事したりしてたので、
そりゃもう見る機会が沢山ありました私。
日本での公開は今月からだったようですが、
デップーにせよアポカリプスにせよ、
氾濫してる日本の意味不明ラブコメの為に枠を譲っているのか!?
というくらい公開が遅すぎて本国で見る頃にはシーズンが違うという。

★評判
ご存知かも知れませんがコケました。
原因は俳優や内容のせいにされがちですが、まず脚本が酷かった。
ディズニーは脱税をしない代わりに、
こういう作品でコケておくことでブートピア、
じゃないズートピアとかドリーの収益を敢えて打ち消してるんですよね!
私知ってますよ!ヒット作の後にXXXX映画を2-3本作るディズニーの手法。
願わくば、エマ・ワトソン演じる美女と野獣のリメイクが
それに当たらない事を願っていますが・・・
今のところ同じディズニープリンセス系だと、
どうやってもリトルマーメイド(クロエ・モレッツ主演)
の方がウェイトありそうなので諦めムードです。


★どんなお話?
原作はルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」の2作目、
「鏡の国のアリス」をモチーフに・・・しているのかと思いきや、
もう完全にシナリオが違うのでここで説明。

~前作までのあらすじ
交易商人の父を亡くした娘のアリス・リドル。
母親のススメで全然タイプじゃない取引先の息子と婚約させられるも、
ワンダーランドにトリップして自我を取り戻すやいなや、それを破棄。
代わりにその父親を誑し込んで、違った、
取り込んで、海外貿易に意気揚揚と出発しました。
1人身になった母親を残して。

~今作からのあらすじ
海外貿易から帰還したアリス。
ところが取引先のおっさんは死亡しており、
後を継いだのはあの嫌な息子。
アリスにフラれた後、さっさと結婚して子供を設けている。
母1人残った財政難のリドル家に資金援助する代わりに、
体を、違う、貿易船とそのルートを寄越せと言ってきます。
母親はあなたの為を思ってなのよ!と勝手に交渉を終わらせてる様子。
最悪だよ!とキレたアリスはまたもやワンダーランドに。
そこで自我を取り戻す(2回目)と、
やっぱりノーを突きつけます。
今度は母親もそれに乗っかって屋敷を売り払い、
それを元手に自分達で貿易会社設立!
(・・・あれっ、それが出来るならなんで今までこの人に気兼ねしてたんだろ?
ともあれ、親子ドヤ顔で新しい航海に出発するところでお話終わり。



★どんな層に向けて作ったの?
この作品のアリスは私の大好きな女優、
ミア・ワシコウスカが出てるので推していきたい・・・しかし限度がある・・・!

失礼しました。
このアリスは他のモチーフ作品に比べて、だいぶ活動的な性格です。
そういった描写を前触れもなく入れるし、
そもそも無名の頃からいきなりこの作品に出てきた辺りも踏まえて、
演じた女優さん本人の性格を強く投影している所があります。
総指揮がティムなので、おそらくフェミニズムに拠った演出が多くあり、
従ってですね、
(男社会の枠組みから)自立した(自由奔放な)女性を描きたかったのだと思います。
ですからターゲットは女性です。もしくはそういう女性に共感したい男性。
て事はデート映画か、そうでなければ女子同士で見に行く人向け。
これが日本の女性から共感を得られるか?は
男性なら奥さんや彼女と見に行ってみればいいし、
女性なら地上波のやつとか見れば大体わかると思います。
結果大コケしたわけですがもういいよね言わなくてね。

この作品は、現実とワンダーランドを行き来するアリスが、
旅の中で得た絆や思いやり、自分がどうあるべきかを見つめ直して、
それを現実に役立てていく物語です。
従って、現実はひどければひどいほどいいし、
ワンダーランドという精神世界を際立たせる為にも、
より多くの困難や教訓が、
摩訶不思議な登場人物に彩られてあればよいのですね。
そういった点でもシナリオがどっちつかずでした。
更にターゲットにした女性層から共感を得られなかった理由、
それは、アリスが落ちぶれて居ながらもイギリス社交界に顔がある
「子爵の娘」という設定だった点です。
そうですよね、普通の庶民、町娘だったら
女伊達に貿易船の船長を務めて貴族と交渉する!なんて事にはまずなりません。
スタートラインが違うのに、普通の子と同じ苦境にあるのよ、
なんて言われても、日本の女性は共感しないのです。
とことんシンデレラ並にイジメられているか、
そうでなければアナ雪みたいに絶対的に女性正義で神話並のいいとこお嬢様、
つまりお姫様でないと人はそこに憧れないのです。
限定感か高級感を備えたアリスなんて、もうそれはアリスじゃないんだけどね。


★脚本の方向性はどうすればよかったのだろうか?
結論を先に書いておくと、
もっとワンダーランドの描写をカオスにすればよかったし、
リアルワールドはとことん悲劇、不幸を切実に描くべきだった。
原作のアリスはその摩訶不思議、
敢えて言えば不気味さが良いのですが、
ディズニー版はそもそもアニメからして
勧善懲悪、傲慢な赤の女王を倒してオシマイ、といった形式なので、
原作無視もいいところなのです。
映画版は流石にそこまでひどくないものの、
物語の筋道を知っている人へ向けた二次創作、
といった感が拭えません。
たとえば日本人はハンプティーダンプティーなんか知らないし、
せいぜいウサギが時間が無い!って叫んでるシーン程度しか印象がありません。
謎かけや物語の中の歌よりも、
盆踊りや甲子園野球の方が大多数の日本人には親近感があります。
これは他の国でもそうですよね。

配役に関して監督や総指揮もそこがわかっているのか、
マッドハッターという人物をジョニデにやらせて
インパクトを持たせようとしたのですが、
そもそもそれが失敗です。
アリスの物語における語り部役といえば、もっぱらチェシャ猫。
不気味でありながら、アリスに助言をする役目です。
混沌としたワンダーランドで、
唯一まともに喋って世の中のルールを教えてくれるのはこの猫でした。
だからこそマッドハッターなんてメインに置いちゃいけなかった。
確かにアリスにとってはインパクトのある相手だし、
あまりまともな事を喋らないワンダーランドの住人の中では、
なかなかに教訓めいた事を言ったり、
形が人間に近かったりで親近感のある人物ではあります。
でもね、あくまで「マッド」なわけで、
どんなに奇抜なピエロメイクをしても、
まともな事を一切言わなくても、(せめて意思疎通が出来なきゃよかったのに
アリスに目配せしたり手助けしたり出来る気が利いたハッターなんて、
それはただのジョニデでしかないわけです。
パイレーツオブカリビアン、インワンダーランドでした。
ハッターは機転を利かせてアリスをティーポットに匿うだとか、
物語を遂行する為に白の女王軍の先陣を切って戦うだとか、
一族全滅の悲しい過去を背負っているだとか、
そういった「まとも」な部分は一切持ち合わせていない人物なのに、
ジョニデがやってるからただのジョニデになっちゃいました。
同じジョニデでもハッター役ではなく、
チェシャ猫を演じていれば作風も違ったようになったかも。
場面場面でジョニデが「発想」も「機転」も演じてしまっているせいで、
なんでアリスが現実世界でそれを得ているのかが説明がつきません。
困難に際して自分で考えて活路を見出すアリスのヒロイン像が、
ジョニデという「騎士」のせいでぼんやりぼやぼやになってしまっています。


★だからこれを見よう
そんな映画でガッカリしてしまった人にお口直しです。
Alice Madness Returns。
ゲームをプレイしなくてもAll Cutsceneで検索すればどこかにあるはず。
ゲームをやる時間がある人はぜひやってみてね。
ダークなロンドン、ダークなワンダーランド、
非ディズニー式エンディングが待ち受けています。
金髪碧眼でキラキラしてるアリスより、
こっちのアリスの方が良くない?
それじゃ、また次回。

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